だって自分の将来を今決めても、世界なんてすぐ変わっちゃうじゃないですか
インベスターZを読み終わった。
途中から予感していたが、最後はあっさりとひっそりと終わった感じ。
伏線の回収も追いつかず……ネタ切れか、人気切れか。
確かに、15巻あたりまでは実家で大粒の涙を流しながら、また情熱に燃えながらせわしなく
読んでいた私だったが、自宅に帰ってきてからは淡々と読み進めていたように思う。
では読む価値がないかといえば答えは断固 ”NO!”
投資の知識だけに限らず、金融全般について学べ、企業の成り立ちや経営、ベンチャーとはどういうものか、後半にはガンの重粒子線治療などの情報も取り入れながら展開し、読み応えとしては申し分ない。私は特に就職活動を扱った回が印象に残る。
就職活動に悩む登場人物が投資を始めたことにより企業を見る感性が変わり、大企業ばかりを受けることを辞め、企業研究を重ねた結果、最終的にDMMに勤め先を決める。彼女はDMMの経営手法を務めながら学び、独立することを目指している。
そんな彼女が「私にとって会社は一生務める場所じゃない、自分をさらに上へと引き上げるための踏み台なの!」的な発言をする場面がある。
あのねぇ。
ほんとにねぇ。。。
なんで私が就活生だった時にこの漫画なかったの!!!!!?????
ほんっとに!!
自分が86年生まれだってことを恨んだのは久しぶりですよ。全く。
いやぁすがすがしかったな。あの回。若い子に読んでほしいな。
そして特に内容が薄いと言われている20巻、21巻。金融の知識面ではそうでも、別の面で私はな心動かされる場面があった。
中学1年生の主人公が志や夢について尋ねられ、あっけらかんと「夢なんてないですよ」と言う場面。将来なりたいものや目標もないのかときかれても「なにもない」と。
彼は続ける。
「だって自分の将来を今決めても、世界なんてすぐ変わっちゃうじゃないですか」
「その時々にやれることをやっていけばいいんじゃないですかね」
そして、大人が子供に夢を持ちそれに向かって努力しろというのは、すごく楽な常套句であり、そんなものに素直に従うほどボクはバカじゃない、と続ける。
この先の展開が私は大好きなのだが、ここには書かないので、ぜひ漫画を読んでほしい。ちなみに私の感想は、御見それしました。の一言に尽きる。
さて、夢というものについては、私も持っているべきものだと信じる人間の一人だった。
私は幼いころ、本屋に自分の書いた本が平積みされているところを何度も想像しては、本を出すことが夢だと同級生や先生に語って生きてきた。でも近い将来、本屋はなくなるかもしれない。これだけネット通販や電子書籍が発達し、利用されているのだ。今後本屋や、紙の出版物が増える可能性は限りなく低いだろう。
つまり、近い将来私の幼いころ描いていた、「自分の本が本屋に平積み」という夢は実現不可能になる、ということ。
その時、私はどうするか。
きっと、こういうことを子どもに伝えろと言うことだろう。
「夢を追え」と簡単に言いっぱなしにするのではなく、「夢」とは何かきちんと伝える。私の場合なら、「夢」というのは名詞ではなく動詞で描け、と伝えたい。
「本屋に著書が平積みにされる作家」ではなく
「書くこと」を夢にしようよ、と。
それならば本屋がなくなろうと、紙の出版物がなくなろうと、実現可能だ。人々が情報や意思を交換するツールとして文字を手放すのはずいぶん先のはずだから。今だって私は紙にではなく、機械に向かって書いている。何かがなくなっても、それに代わるものは出てくる。行いたい「行為」を夢や目標にすれば、実現不可能になることはないだろう。(本当は紙の本が出したいんだけどね……諦めが悪いもので……)
「みんながあこがれるような歌手」ではなく、
「心を込めて歌を歌うこと」を。
「有名な画家」ではなく
「思いのままに絵を描くこと」を。
究極には「自分で次々にワクワクを見つけて、それに没頭できること」かな!
将来はパソコンやスマホすらなくても他者と意思疎通ができるかもしれない。自分で心に思ったことがどの媒体を通さずとも相手に送信までされる世の中かもしれない(人がついに文字すらも手放す時!)。
でもそんな世の中になっても、私は「書くこと」をして生きていたい。
その行為をすでに「書く」とさえ言わなくなっていたとしても。
そんな概念すら無いというのならそれはその時、また違うわくわくすることを見つけて楽しめる自分でいること。これが夢。
インベスターZには本当に色んなことを教わったし、考えたし、感動したし、熱くなったし、昔の日本人だってリスクをとることができたと知れてよかった。勇気をもらえた。
充実した読書だった。